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JPJapananalyzedRegulatory guidance

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初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン

The document primarily frames AI governance in schools as enabling appropriate and effective use of generative AI to support student learning and teacher capabilities, while managing associated risks. The central thrust is how to utilize AI tools beneficially within the existing educational framework, emphasizing AI literacy, human-centered principles, and practical guidance for appropriate adoption rather than restriction. Consumer/public safety and fundamental rights appear as secondary framings through attention to information security, privacy, copyright, and age-appropriate use.

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    初等中等教育段階における 生成AI の利活用に関するガイドライン 文部科学省 初等中等教育局 令和6年12 月26 日 Ver. 2.0 2 2 目次 はじめに __________________________________________________ 3 ガイドラインの策定に当たって ___________________________________________ 3 ガイドラインの位置付け及び構成 ________________________________________ 4 1.生成AI について _________________________________________ 5 2.基本的な考え方 _________________________________________ 7 (1)学校現場における人間中心の生成 AI の利活用 _________________________ 7 (2)生成 AI の存在を踏まえた情報活用能力の育成強化 ______________________ 8 Box-1. 資質・能力の3 つの柱に基づく情報活用能力の整理 _________________________ 8 Box-2. 情報モラル教育の一層の充実について ___________________________________ 9 3.学校現場において押さえておくべきポイント ________________________ 10 Box-3. 学校現場において生成AI を利活用する際の著作権に関する留意点 ______________ 11 3-1.教職員が校務で利活用する場面 ________________________________ 13 Box-4. 教職員による校務での利活用例 _____________________________________ 14 3-2.児童生徒が学習活動で利活用する場面 ___________________________ 17 Box-5. 学習場面において利活用が考えられる例、不適切と考えられる例 _________________ 18 Box-6. 課題に関する留意事項について ______________________________________ 20 3-3.教育委員会等が押さえておくべきポイント ____________________________ 21 参考資料編 ______________________________________________ 23 教職員が校務で利活用する際のチェック項目 ________________________________ 24 児童生徒が学習場面で利活用する際のチェック項目 ___________________________ 25 生成 AI パイロット校における先行取組事例 ________________________________ 26 学校現場において留意すべき代表的なリスクや懸念の例 ________________________ 28 学校現場で活用可能な研修教材等 ____________________________________ 29 その他の参考資料 ________________________________________________ 31 3 3 はじめに ガイドラインの策定に当たって (生成AI の普及と論点) 近年、急速に進化を遂げている生成 AI はかつてないスピードで社会に普及しており、その利便性とリ スクの存在から社会に様々な影響を及ぼしている。生成 AI は、既存情報を大量に学習し、それらを基 に計算原理に従って有用性の高い出力をすることが可能であり、教育分野においても様々な利活用が 考えられる。一方、学校現場での利活用に関しては、学ぶことの意義そのものに対する根源的な論点 から、差別や偏見、環境負荷等の倫理的・社会的な論点、利活用に当たってのセキュリティ確保等の 技術的な論点、それらを踏まえた具体的な取扱い等の実務的な留意点まで、非常に幅広い論点が指 摘されている。 (資質・能力の育成に向けた生成 AI の利活用) 現行の学習指導要領は、AI の存在を前提として、生きて働く「知識及び技能」、未知の状況にも対 応できる「思考力、判断力、表現力等」、学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間 性等」といった、社会の変化が加速し、複雑となるこれからの時代に必要な資質・能力を確実に育成す ることを目指している。このような学習指導要領の理念は、生成AI が急速に進化している現在において も重要である。真偽の程は別として、手軽に情報が得られるデジタル時代であるからこそ、学ぶことの意 義についての理解を深めることや、個々の情報の意味を理解し、問題の本質を問うこと、単なる個別の 知識の集積ではない深い意味理解を促すことが求められる。 このような前提を踏まえれば、AI 時代を生きる子供たちが生成 AI をはじめとするテクノロジーをツール として使いこなし、一人一人が才能を開花できるようになることは重要であり、生成 AI の学校における 利活用は、そのための助けになり得るものである。学校現場が混乱したり、不安を感じたりすることなく、 学習指導要領に示す資質・能力の育成に向けて適切に生成 AI と向き合い、利活用することができる よう、学校現場の視点から基本的な方針及び実務的なポイントを示すことが求められている。 (政府の取組) 文部科学省では、生成AI のメリットやデメリットについて多方面からの指摘があることを踏まえ、主とし て対話型の文章生成 AI について学校関係者が活用の適否を判断する参考資料として、教育工学や 教育方法学、AI 研究者等各分野の有識者や学校現場・教育委員会関係者等へのヒアリングを基に、 令和 5 年 7 月に「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する 暫定的なガイドライン (ver1.0)」を公表した。また、政府としても、「人間中心の AI 社会原則」1等において求められてい るように、人間の尊厳が尊重される社会、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会、持 1 「人間中心のAI 社会原則」(平成31 年3 月29 日、内閣府統合イノベーション戦略推進会議決定) 4 4 続可能な社会を目指すという基本理念を実現すべく、広島 AI プロセス 2を通じた国際的なルールメイ キングや「AI 事業者ガイドライン」3の公表など、様々な取組を進めている。 ガイドラインの位置付け及び構成 (ガイドライン改訂に向けた検討) 以上の背景を踏まえ、令和6年7月に文部科学省初等中等教育局に教育工学、自然言語処理、 教員養成等各分野の有識者、現職教員、教育行政関係者等を構成員とした「初等中等教育段階 における生成 AI の利活用に関する検討会議」を設置し、生成 AI 関連事業者等からのヒアリングも行 いつつ、生成AI の利活用の在り方を検討してきた。本ガイドラインは、同検討会議での議論を経て、暫 定的なガイドラインを基に技術の進展などを踏まえつつ 、以下のような構成の変更等を通じて、読み手 に寄り添ったものとなることを意識して改訂を行った。 (ガイドラインの位置付け及び構成) 本ガイドラインは、教職員や教育委員会等の学校教育関係者を主たる読み手として、学校現場に おける生成 AI の適切な利活用を実現するための参考資料となるよう、利活用に当たっての基本的な 考え方や押さえるべきポイントをまとめたものであり、学校現場での生成 AI の利活用を一律に禁止した り義務付けたりするものではない。 このような位置付けから、本ガイドラインでは、生成 AI の概要、基本的な考え方を示した上で、学校 現場において押さえておくべきポイントとして、利活用する場面や主体に応じた留意点について、現時点 の知見を基に可能な限り具体的に示した。なお、今後の技術の進展や学校現場での取組等の状況を 踏まえ、必要に応じて改訂を行うことを想定している。 加えて、本ガイドラインの参考資料として、各場面や主体に応じて生成AI を学校現場で利活用する 際に押さえておくべきポイントを整理したチェック項目や生成 AI パイロット校における先行取組事例、学 校現場において活用可能な研修教材等の情報をまとめている。学校現場で生成 AI を利活用するに 当たっては、これらも参考にしていただきたい。 2 広島AI プロセスは、高度なAI システムに関する国際的なルール作りを行うために立ち上げられたものであり、詳細に ついては総務省HP を参照。 3 「AI 事業者ガイドライン(第1.01 版)」(令和6 年11 月22 日、総務省・経済産業省) 5 5 1.生成 AI について (生成AI の急速な進化と利活用の広まり) 生成AI4は、令和4年11 月にOpenAI 社からChatGPT が公表・リリースされて以降、急速に社 会に普及した。この数年で、文章だけでなく動画像や音声等、異なる種類の情報をまとめて 扱えるよう になり、人間の反応と遜色ないスピードで応答ができるようにもなっている。これに加えて、生成 AI が自 律的に目的を達成するサービスやオフライン環境において動くモデル等の登場 をはじめとして、様々な技 術革新が進んでいる。また、生成 AI のモデルが公開されることと相まって、様々な事業者に新たな生成 AI モデルやサービスの開発・提供可能性が広がっている。 生成 AI は、あたかも人間と自然に会話しているかのような応答や、情報の収集・整理・分析結果等 の出力が可能であり、文章の素案作成やイメージの生成、語学学習における利活用、プログラミングコ ードの生成、ブレインストーミングの壁打ち相手としての利活用、既存のサービスへの生成 AI の機能の 搭載など、様々な利活用が広まっている。 (学校現場における生成 AI の利活用) 学校現場においても、一般向けの汎用的な生成 AI サービスが利活用可能な状況にあるだけでなく、 1人1台端末の標準仕様であるブラウザや学習支援ソフトウェア、普段利用する 検索エンジン等にも 組み込まれているほか、汎用的なモデルと連携することで、生成 AI を用いた様々なサービスが教育分 野においても導入され、利活用の幅が広がりつつある。このような状況の中、テスト問題や各種文書 の たたき台作成等の校務における生成AI の利活用が進むほか、児童生徒の学習場面においても、一人 一人のニーズや特性に合った学びを実現したり、新たな視点やより深い視点の出力から学びをより一層 深めたりするなどの利活用が進むことが予想される。 5 (生成 AI のリスクと技術的対策) 生成 AI の推論性能を高める研究開発、サービスのリリース等も進められてはいるものの、モデルの性 質上誤った出力(ハルシネーション)を完全に防ぐことは極めて難しいとされているほか、従来の AI でも 指摘されていた学習過程・出力過程の信頼性・透明性への懸念、大量のデータに潜む偏見や差別等 のバイアスをそのまま再生成することなど、様々なリスク 6も指摘されている。このようなリスクに対しては、 例えば、検索拡張生成 7の技術を活用して誤った回答を抑制する技術、入力するプロンプトを基に権 4 生成AI とは、「文章、画像、プログラム等を生成できる AI モデルに基づく AI の総称」のことを指す。(「AI 事業者 ガイドライン(第1.01 版)」(令和6 年11 月22 日、総務省・経済産業省)) 5 学校現場における先行取組事例については、参考資料p.26~27 を参照。 6 学校現場において想定される代表的なリスクや懸念については、参考資料p.28 を参照。 7 検索拡張生成(RAG; Retrieval Augmented Generation)とは、特定のデータベースを検索し、 その結果 も考慮して出力を生成する仕組み。 6 6 利侵害等が起こらないよう出力を制限する技術等も進展しており、そのような技術を採り入れたサービス を選択することによりリスクを軽減することも可能となりつつある。 図1 生成 AI とは 図2 対話型生成 AI について 8 8 JST 研究開発戦略センター(CRDS)報告書「人工知能研究の新潮流 2 ~基盤モデル・生成 AI のインパクト ~」(2023 年 7 月)を基に文部科学省において作成 7 7 2.基本的な考え方 「1.生成 AI について」で示した生成 AI の特徴を踏まえ、学校現場において生成 AI を利活用する 際の基本的な考え方を以下に示す。 (1)学校現場における人間中心の生成AI の利活用 (人間中心の原則) AI 利用の基本原則として、「AI の利用は、憲法及び国際的な規範の保障する基本的人権を侵す ものであってはならない。AI は、人々の能力を拡張し、多様な人々の多様な幸せの追求を可能とする ために開発され、社会に展開され、活用されるべきである。」という「人間中心の原則」9がある。 これは学校現場においても同様であり、生成AIと人間との関係を対立的に捉えたり、必要以上に不 安に思ったりするのではなく、生成 AI は使い方によって人間の能力を補助、拡張し、可能性を広げてく れる有用な道具にもなり得るものと捉えるべきである。その上で、生成 AI の出力はあくまでも「参考の一 つである」「最適解とは限らない」ことを認識するとともに、リスクや懸念を踏まえつつ、最後は人間が判断 し、生成AI の出力結果を踏まえた成果物に自ら責任を持つという基本姿勢が重要である。 (児童生徒の学びと生成 AI) 児童生徒の学びにおいては、学習指導要領に示す資質・能力の育成に寄与するか、教育活動の目 的を達成する観点から効果的であるかを吟味した上で利活用するべきであり、生成 AI を利活用するこ とが目的であってはならない。 そのためには、適切な課題設定と指示文(プロンプト)により自らの求める成果物につながる出力を させ、その真偽や適切性を的確に判断できることが前提となる。このため、各教科等で学ぶ知識や文章 を読み解く力、物事を批判的に考察する力、問題意識を常に持ち、問いを立て続けることや、その前提 としての「学びに向かう力、人間性等」の涵養がこれまで以上に重要になる。そうした教育を拡充する際 には、体験活動の充実をはじめとする教育活動における実体験と ICT 利活用とのバランスや調和に一 層留意する必要がある。 (教師の役割と生成 AI) 教育は、教師と児童生徒との人格的な触れ合い を通じて行われるものであり、適切な指導計画や 学習環境の設定、丁寧な見取りと支援といった、学びの専門職としての教師の役割は、生成 AI が社 会インフラの一部となる時代において、より重要なものになる。 学校現場における生成 AI の効果的な利活用を実現するためにも、生成 AI の仕組みや特徴を理 解するなど、教師には一定の AI リテラシーを身に付けることが求められる。例えば、情報技術を日常の 校務等に活用しつつ、教師自身が新たな技術に慣れ親しみ、利便性や懸念点、賢い付き合い方を知 っておくことが、教育活動で適切に利活用する素地を作ることにも繋がる。あわせて、このような教師の学 9 「人間中心のAI 社会原則」(平成31 年3 月29 日、内閣府統合イノベーション戦略推進会議) 8 8 びをサポートできるよう、環境の整備や研修機会等の提供も求められる。なお、教職課程においても、 生成 AI の普及といった社会の変化や学習環境の進化に伴う新たな学びの実装の進展等も踏まえ、 本ガイドラインを参考資料として活用いただくことが期待される。 (生成 AI 関連事業者に期待される役割) 学校現場に関わる生成 AI 関連事業者においても、生成 AI サービスの改善や研修機会の提供等 を通じて連携し、責任ある形で向き合っていく ことが求められる。また、ヒアリングを通じて学校の実態や 希望を把握するなど、生成 AI サービスの改善サイクルに学校現場の意見を取り入れることも期待され る。 (2)生成AI の存在を踏まえた情報活用能力の育成強化 (学習の基盤となる資質・能力としての情報活用能力) 学習指導要領では、「情報活用能力(情報モラルを含む)」を言語能力、問題発見・解決能力と ともに学習の基盤となる資質・能力として位置付けており、新たな情報技術である生成 AI の急速な進 化や普及のような将来の予測が難しい社会において、情報を主体的に捉え、活用すること、情報技術 を学習や日常生活に活用できるようにすることの重要性を強調している。 情報活用能力は、世の中の様々な事象を情報とその結び付きとして捉え、情報及び情報技術を適 切かつ効果的に活用して、問題を発見・解決したり自分の考えを形成したりしていくために必要な資質・ 能力である。各学校においては、教科等横断的な視点からの教育課程の編成を通じて、各教科等の 学習の過程における指導の中で情報活用能力を育成することが期待される。 Box-1. 資質・能力の3 つの柱に基づく情報活用能力の整理 学習指導要領解説総則編では、情報活用能力を以下の3 つの柱に基づき整理をしている。情報活用能力をより具 体的に捉えれば、学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて情報を得たり、情報を整 理・比較したり、得られた情報を分かりやすく発信・伝達したり、必要に応じて保存・共有したりといったことができる力であ り、さらに、このような学習活動を遂行する上で必要となる情報手段の基本的な操作の習得や、プログラミング的思考、 情報モラル、情報セキュリティ、統計に関する資質・能力等も含むものである。 ○知識及び技能(何を理解しているか、何ができるか) 情報と情報技術を活用した問題の発見・解決等の方法や、情報化の進展が社会の中で果たす役割や影響、技術に 関する法・制度やマナー、個人が果たす役割や責任等について、情報の科学的な理解に裏打ちされた形で理解し、情報 と情報技術を適切に活用するために必要な技能を身に付けていること。 ○思考力、判断力、表現力等(理解していること、できることをどう使うか) 様々な事象を情報とその結びつきの視点から捉え、複数の情報を結びつけて新たな意味を見いだす力や問題の発見・ 解決等に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力を身に付けていること。 ○学びに向かう力、人間性等(どのように社会・世界と関わりよりよい人生を送るか) 情報や情報技術を適切かつ効果的に活用して情報社会に主体的に参画し、その発展に寄与しようとする態度等を身 に付けていること。 9 9 (情報活用能力の育成強化) 生成 AI は加速度的に普及・発展しており、スマートフォン等のデバイスが広く利用されることと相まっ て、既に一定数の児童生徒が学校外で何らかの形で生成 AI に触れているとの指摘もある。さらに、1 人1台端末の利活用が日常化する中での児童生徒の学習環境への統合や、普段利用する検索エン ジン等に組み込まれた生成 AI の出力結果を意図せず利用していることも考えられるなど、様々な形で 生成 AI が社会生活に組み込まれつつある。 これらを踏まえれば、情報活用能力の育成に当たっては、生成 AI が社会の中で果たす役割や影響、 生成 AI に関する法・制度やマナー等について科学的な理解に裏打ちされた形で理解すること、問題の 発見・解決等に向けて生成 AI を適切かつ効果的に利活用し、情報社会に主体的に参画する態度を 身に付けていくことが期待される。特に、多くの社会人が生産性の向上に活用している生成 AI の仕組 みの理解や、どのように学びに生かしていくかという視点、近い将来使いこなすための力を各教科等の中 においても意識的に育てていく姿勢は重要であり、生成AI が更に社会生活に組み込まれていくことを念 頭に置き、発達の段階や各学校段階、児童生徒を取り巻く環境や地域の実情等 を踏まえつつ、情報 モラルを含む情報活用能力の育成を一層充実させていく必要がある。 Box-2. 情報モラル教育の一層の充実について 学習指導要領解説総則編では、情報活用能力に情報モラルが含まれることを特に示している。情報モラルは「情報社 会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」であり、具体的には、他者への影響を考え、人権、知的財産権等 自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任を持つことや、犯罪被害を含む危険の回避等、情報を正しく安全に利用 できること、コンピュータ等の情報機器の使用による健康との関わりを理解すること等を指す。 「生成 AI の普及により偽情報が増加する」「フィルターバブル等に子供がさらされている」といった指摘もある中において は、発達の段階に応じた児童生徒の情報モラルを育成することがますます重要であり、また、 生成 AI の特徴を踏まえれ ば、情報の真偽を確かめる(いわゆるファクトチェック 10)方法等もこれらの活動の一環として意識的に学んでいくことが望 ましい。生成AI の普及も念頭に置きつつ、発達の段階に応じて以下のような学習活動を強化することが求められる。11 • 情報発信による他人や社会への影響について考えさせる学習活動 • ネットワーク上のルールやマナーを守ることの意味について考えさせる学習活動 • 情報には自他の権利があることを考えさせる学習活動 • 情報には誤ったものや危険なものがあることを考えさせる学習活動 • 情報セキュリティの重要性とその具体的対策について考えさせる学習活動(高等学校段階のみ) • 健康を害するような行動について考えさせる学習活動 • インターネット上に発信された情報は基本的には広く公開される可能性がある、どこかに記録が残り完全に消し去る ことはできないといった、情報や情報技術の特性についての理解を促す学習活動 10 厳密な意味での情報の真偽の確認は児童生徒には難しい場合もあるが、ファクトチェックでは複数の方法(情報 の発信者、発信された時期、内容、他の情報と比較する等)を組み合わせて、情報の信ぴょう性を確認することが必 要。その際、検索エンジンによる検索結果は生成 AI が出力したものがある可能性に留意するとともに、生成AI の出 力からファクトチェックを要する箇所を見いだす力を養うことも重要。 11 学習指導要領解説総則編に記載のある学習活動。また、これらの実施に当たっては、現行の学習指導要領にお いて情報モラルの指導が明記されている道徳科(小学校・中学校)、社会科(中学校)、技術・家庭(中学校・ 技術分野)、地理歴史(高等学校)、公民(高等学校)、情報科(高等学校)等だけではなく、各学校段階 での学習内容に応じて各教科等や生徒指導との連携も図ることが重要。 10 10 3.学校現場において押さえておくべきポイント 「1.生成 AI について」で示したとおり、学校現場においては、テスト問題や各種文書のたたき台作成 等の校務において生成 AI の利活用が進むほか、児童生徒の学習場面においても、一人一人のニーズ や特性に合った学びを実現したり、新たな視点やより深い視点の出力から学びをより一層深めたりする などの利活用が進むことが予想される。ここでは、「2.基本的な考え方」で示した考え方に基づき、学校 現場での適切な生成 AI の利活用の実現に資するよう、以下①~⑤の観点で共通して押さえておくべ きポイントを整理した。また、「3-1.教職員が校務で利活用する場面」、「3-2.児童生徒が学習活動で 利活用する場面」、「3-3.教育委員会が押さえておくべきポイント」では、各場面や主体に応じてこれら 5つの観点に基づき整理しているため、必要な箇所を参照いただきたい。 ① 安全性を考慮した適正利用 人間中心の原則に基づき生成 AI の利活用に関するリスクに対応するためには、関係法令を遵守し た利用を前提とし、開発者や提供者の想定する範囲内での生成 AI サービスの適正な利活用を行うこ とが重要である 12。具体的には、年齢制限や保護者の同意の必要性、生成物のライセンスの所在など、 生成 AI サービスの提供者が定める最新の利用規約を確認し、遵守する必要がある。 ② 情報セキュリティの確保 学校現場において安全に生成 AI を利活用するためには、情報セキュリティの確保が重要である。文 部科学省が策定する最新の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」 13を参考にしながら、 教育委員会は、学校現場の実態に即した教育情報セキュリティポリシー 14等の策定・必要に応じた見 直しを行い、教育委員会・学校現場においてはそれらを遵守する必要がある。 ③ 個人情報やプライバシー、著作権の保護 学校現場での適切な情報の取扱いの観点では、プライバシーを尊重し個人の権利利益を保護する ため、個人情報保護法等の関係法令等を遵守する必要がある。また、生成 AI サービスの利活用時に は、意図せず他人の著作権を侵害してしまわないように、生成 AI と著作権制度について正しく理解す る必要がある。 12 本ガイドラインにおいては、学校現場における利活用を念頭に利用者が配慮すべき事項を中心に記載している。開 発者・提供者における AI セーフティ・安全性の確保については、「AI 事業者ガイドライン」や「AI セーフティに関する評 価観点ガイド」(令和6 年9 月18 日、Japan AI Safety Institute)等を参照。 13 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和6年1月、文部科学省) 14 情報セキュリティポリシー(組織内の情報セキュリティを確保するための方針、体制、対策等を包括的に定めた文書 のことであり、各地方自治体の情報セキュリティ対策における基本的な考え方を定める「基本方針」と、基本方針に基 づき全ての情報システムに共通の情報セキュリティ対策の基準を定める「対策基準」を総称したもの。)のうち、教育現 場特有の事情を踏まえた情報資産の守り方等を定めるもの。 11 11 ④ 公平性の確保 特定の個人ないし集団への人種、性別、国籍、年齢、政治的信念、宗教等の多様な背景を理由 とした不当で有害な偏見及び差別が生じることを避けるため、生成 AI の学習データや入力するプロンプ ト、連携する外部サービス等によってバイアスが含まれ得ることに留意し、公平性を欠くことがないよう、人 間の判断を介在させる必要がある。 ⑤ 透明性の確保、関係者への説明責任 生成 AI サービスの利用目的やその態様、リスク等の必要な情報を整理し、関係者に提供することが 重要である。各地域や学校の実態を踏まえ、必要に応じて教職員や児童生徒、保護者等への説明の 機会や問合せの窓口を設けることも考えられる。 15 Box-3. 学校現場において生成 AI を利活用する際の著作権に関する留意点 (著作権に関する基本的な考え方) 著作権法は、著作物の「公正な利用に留意」しつつ、「著作者等の権利の保護」を図ることで、新たな創作活動を促 し、「文化の発展に寄与すること」を目的としており、「著作者等の権利・利益を保護すること」と「著作物を円滑に利用でき ること」のバランスをとることが重要と考えられている。 著作権は「思想又は感情を創作的に表現した」著作物を保護するものであり、単なる単語やデータ(事実)やアイディ ア(作風や画風等)は著作物に含まれない。 著作権法に定める権利(複製権や公衆送信権等)の対象となる形で他人の著作物を利用(複製やアップロード 等)する場合には、原則として著作権者の許諾が必要である。 許諾なく他人の著作物を利用した場合、著作権侵害となり得る。著作権侵害となるか否かは、「他人の著作物を利用 した」といえるか、すなわち、既存の著作物との「類似性(創作的表現が共通していること)」及び「依拠性(既存の著作 物を基に創作したこと)」があるか否かで判断される。 ただし、著作物の利用のうち、私的使用のための複製や、学校の授業の過程における複製等の、著作権法上、著作 権者の許諾なく著作物を利用できるとされている場合(権利制限規定が適用される場合)には、著作権侵害とならず、 利用可能となる。 (学校において生成AI を利活用する場合の著作権に関する基本的な考え方) 学校においても、生成 AI を利活用して生成した文章等を利用する場合などにおいては、既存の著作物に係る権利を 侵害することのないように留意する必要がある。すなわち、生成物に既存の著作物との類似性及び依拠性があるか否かに ついて、留意する必要がある。 一方、学校においては、授業の過程における複製についての権利制限規定(著作権法第 35 条)により許諾なく著 作物の複製や公衆送信が可能とされている。そのため、この規定の範囲内であれば、教師や児童生徒が生成AI を利活 用して生成したものが、既存の著作物との類似性及び依拠性があるものであっても、著作権侵害とはならず、著作権者の 許諾なく、授業の過程において利用することが可能である。 15 生成 AI サービスの利用に当たっては、各サービスの提供者が定める利用規約に基づき、保護者の同意を取ること が必要となる場合がある。 12 12 他方で、授業目的の範囲を超えて利用する場合には、著作権法第35 条が適用される要件を満たさない。この場合、 既存の著作物との類似性及び依拠性がある生成物を利用するには、原則として著作権者の許諾が必要であり、許諾を 得ず利用すれば著作権侵害となり得る。 なお、著作権法第 35 条が適用されない場合であっても、その他の権利制限規定の適用を受けて、著作権者の許諾 が不要となる場合もある。 (生成AI の利活用時における著作権に関する留意点) AI と著作権の関係についてはいくつかの論点16があるが、学校現場においては、まず、授業の過程における著作物の利 用として、著作権法第 35 条が適用される場合かどうかを確認することが必要である。同条が適用されない場合は、著作 権侵害となる可能性があるため、以下の点を確認し、著作権侵害を避けるよう取り組むことが望ましい。17 ○ キャラクター名等の特定の固有名詞を入力するなど、既存の著作物と類似したものを意図した生成は行わず、また、 生成に用いたプロンプトなど、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくこと。 ○ AI による生成物については、その利用に先立って、インターネット検索等により、既存の著作物と類似していないかを 確認すること。 なお、生成 AI の利活用に当たっては、生成物を生成する段階(複製)については権利制限規定が適用されるが、 生成物を利用する段階(公衆送信等)には適用されない場合もあ り、利用場面に応じて適用が考えられる権利制限 規定が異なることから、個々のケースに応じて著作権を侵害していないかに留意する必要がある。例えば、私用の PC 上で 既存の画像などの著作物と同一又は類似の生成物を生成する行為は、私的使用目的の範囲内の行為として権利制限 規定が適用され得るが、その生成物を SNS 等にアップロードする行為は、私的使用目的の範囲外の行為となり、権利制 限規定が適用されないといった場合 がある。具体的な事案に応じた判断は最終的には司法判断となるが、必要に応じ て、文化庁において開設している相談窓口を活用することも考えられる。18 16 AI と著作権に関しては、「AI 開発・学習段階」及び「生成・利用段階」における著作物の利用に関する著作権法 上の考え方、AI 生成物の著作物性に関する著作権法上の考え方などの論点がある。詳細は「AI と著作権に関する 考え方について」(令和6年3月15 日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会)等を参照。 17 詳細は、「AI と著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31 日、文化庁著作権課)の p.23 以降の部分等を参照。 18 文化庁のインターネット上の海賊版による著作権侵害対策についての相談窓口や文化芸術活動に関する法律相 談窓口等を参照。 13 13 3-1.教職員が校務で利活用する場面 (1)基本的な考え方 生成 AI は様々な情報を整理し出力することができ、民間企業においても業務の効率化・高度化の 観点で積極的に活用されている。教育は、教師と児童生徒の人格的な触れ合いを通じて行われるも のであり、適切な指導計画や学習環境の設定、丁寧な見取りと支援といった、学びの専門職としての 教師の役割は、生成 AI が社会インフラの一部となる時代において、より重要なものになるという認識の 下に、授業準備や各種文書のたたき台 作成を含む校務において利活用することで、 校務の効率化や 質の向上等、教職員の働き方改革につなげていくことが期待される。また、教職員自身が生成 AI の利 活用を通じて新たな技術に慣れ親しみ、利便性や懸念点、賢い付き合い方を知っておくことは、児童 生徒の学びをより高度化する観点からも重要である。 以上のことから、教職員が生成 AI の仕組みや特徴を理解した上で、生成された内容の適切性を判 断できる範囲内で利用するという前提で、校務において生成AI を積極的に利活用することは有用であ ると考えられる。 (2)具体的な利活用場面 教職員による利活用例としては 、以下のような授業準備・部活動・生徒指導などの児童生徒の指 導にかかわる業務への支援、教務管理・学校からの情報発信・校内研修などの学校の運営にかかわる 業務への支援、外部対応への支援などが考えられる。 利活用の際には、生成 AI から一度で求める出力がなされることを期待せず、複数回の対話の中で 求める出力に近づけていくことや、生成 AI の出力はあくまでも参考の一つであることを認識し、教職員 自らがチェックし推敲・完成させるなど、最後は自分で判断し、生成 AI の出力を踏まえた成果物に自ら 責任を持つという基本姿勢が重要である。 14 14 Box-4. 教職員による校務での利活用例 児童生徒の指導にかかわる業務への支援 【授業準備】 • 授業で取り扱う教材や確認テスト問題のたたき台を作成する • 児童生徒による授業の感想の集約を行う • 授業での発問に対する回答のシミュレーション相手として活用する • 授業で使用したワークシートや振り返りの内容を基にテスト問題のたたき台を作成する • 校外学習の実施行程作成のたたき台を作成する 【部活動】 • 過去の部活動の練習メニュー一覧を読み込ませ、毎日の練習メニュー案を作成する 【生活指導】 • 児童生徒等の生活実態の調査のためのアンケート案を作成する 学校の運営にかかわる業務への支援 【教務管理】 • 時間割・授業時数案を作成する 【学校からの情報発信】 • 各種お便り(学年・学級だより、給食だより、保健だより等)・通知文・案内文のたたき台を作成する • 学校行事に関するHP 掲載文や報告記事のたたき台を作成する 【校内研修】 • 校内研修の資料のたたき台を作成する • 研修や講演会の録画を読み込ませ、要約・議事録案を作成する 外部対応への支援 • 保護者会・授業参観・保護者面談の日程調整に活用する • 外部向け講演会の挨拶文のたたき台を作成する 15 15 (3)利活用の際のポイント 校務における生成 AI の積極的な利活用を実現するため、基本的な考え方に留意した上で、以下 の点についても考慮する必要がある。 ① 安全性を考慮した適正利用 教育委員会の方針に基づき利活用すべきである。生成 AI サービスの多くは約款に基づく外部サービ スとして提供されており、簡易に利用できるが、私用アカウントや教育情報セキュリティ管理者 19の許可 を得ていない私用端末を用いてはならない。また、出力結果のライセンスの所在 20など、生成 AI サービ スの提供者が定める最新の利用規約を確認し、遵守する必要がある。 ② 情報セキュリティの確保 教育委員会が示す教育情報セキュリティポリシーや実施手順、及びそれに基づく教育情報セキュリテ ィ管理者の指示等を遵守する必要がある。個別契約等に基づき適切なセキュリティ対策が講じられた 環境で生成 AI を運用しているような場合を除き、プロンプトに重要性の高い情報 21である成績情報 等を入力してはならない。 ③ 個人情報やプライバシー、著作権の保護 学校現場において教職員が生成 AI を利活用する場合、最新の「教育データの利活用に係る留意 事項」 22等も参照しながら、個人情報保護法等の関係法令等を遵守し、個人情報23の取扱いに関し て必要かつ適切な措置を取る必要がある。例えば、生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトの入 力を行う場合には、生成 AI サービスの提供者が当該個人情報を機械学習に利用するか否か等を十 分に確認すべきである。この際、生成 AI サービスに個人情報を含むプロンプトを入力し、当該個人情 19 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」にその権限及び責任を規定している、学校の情報セキュリティに 関する権限及び責任を有する、システムの利用現場の担当者。教育情報セキュリティ管理者には、校長を充てること が想定される。 20 生成 AI による出力結果の利用については、サービス提供事業者の利用規約等により条件が付されている場合も あるため留意が必要。 21 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」では、情報資産について、セキュリティ侵害による影響(被害) の大きさによって分類・仕分けを行うことを推奨している。 22 「教育データの利活用に係る留意事項」(令和6年3月、文部科学省)は、初等中等教育段階の公立学校の 教職員、教育委員会の職員等が、児童生徒本人の個人情報を含む教育データ(デジタルデータ)を取り扱う際に 留意すべき事項についてまとめたもの。 23 個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により 特定の個人を識別することができるもの等をいい、他の情報と容易に照合することにより特定の個人を識別することが できることとなるものも含まれること、また、インターネット等により公にされている場合も該当し得る(公開・非公開を問 わず該当する)ことに留意が必要。 16 16 報がプロンプトに対する応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合には、個人情報保護法違反 となり得る 24。 著作権については、著作権法第 35 条の適用を考える場合、教師が、既存の著作物と同一又は類 似のものを、学校の HP に掲載することや、保護者向けの学級通信や職員会議・PTA 活動で利用す るなどの授業目的の範囲を超えて利用する場合は、授業の過程における利用には当たらず、同条が適 用されないため、他の権利制限規定の適用がない場合は著作権侵害となる可能性がある。また、個々 の児童生徒が購入することを想定して販売されている問題集等を 1 部購入して、コピーして配付するこ とは、著作権者の利益を不当に害する場合として同条の適用がないと考えられている。生成 AI を利用 する場合もこれらの考え方は同様となり、同条の適用について確認する必要がある。 ④ 公平性の確保 校務での利活用を想定する場合、データの分析や抽出に生成AI を利活用することも考えられる。ハ ルシネーションやバイアス等の生成 AI の特徴も意識した上で、出力された内容を取り入れるかどうかは 教職員が判断しなくてはならない。 ⑤ 透明性の確保、関係者への説明責任 学校現場で利活用する際に必要となる情報を教育委員会に共有するなど、教育委員会と一体とな って適切な生成 AI の利活用を進めるべきである。学校の管理職は、生成 AI についてどのような運用 が行われているかを把握した上で、適切な利活用がなされているかどうかを適時確認する必要がある。そ の際、働き方改革など、生成 AI の利活用を進める趣旨や目的についての共通理解を図り、利活用を 通じて得られた成果は積極的に教職員全体に共有していくことが重要である。 24 「生成AI サービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日、個人情報保護委員会)を参照。 17 17 3-2.児童生徒が学習活動で利活用する場面 (1)基本的な考え方 児童生徒の学習場面での利活用に当たっては、生成AI と人間との関係を対立的に捉えたり、必要 以上に不安に思ったりするのではなく、生成 AI は使い方によって人間の能力を補助、拡張し、可能性 を広げてくれる有用な道具にもなり得ることを理解した上で、発達の段階や情報活用能力の育成状況 に十分留意しつつ、リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべきである。 利活用の適否の判断に際しては、学習指導要領に示す資質・能力の育成につながるか、教育活動 の目的を達成する観点で効果的であるかを吟味する必要がある。具体的には、児童生徒にハルシネー ションやバイアス等の生成 AI の基本的な仕組みや特徴を理解させた上で、生成 AI に全てを委ねるの ではなく自己の判断や考えが重要であることを十分に認識させられるか 、適正な評価の阻害や不正行 為に繋がらないか、生成 AI の出力を基に深い意味理解を促し、思考力を高める使い方をできるかなど、 発達の段階や各教科等における学習の状況等を含む児童生徒の実態を踏まえ、そうした教育活動が 可能であるかどうかの見極めが重要である。 なお、学習課題やテストの内容によっては、児童生徒が生成 AI を用いることで簡単にこなせる可能 性があることも前提に、課題の内容等を吟味することや、問題の本質を問うこと、深い意味理解を促す ことを重視した授業づくりを行うことも期待される。 (2)具体的な利活用場面 児童生徒の生成 AI の利活用場面としては、「生成 AI 自体を学ぶ場面(生成 AI の仕組み、利 便性・リスク、留意点)」、「使い方を学ぶ場面(より良い回答を引き出すための生成 AI との対話スキ ル、ファクトチェックの方法等)」、「各教科等の学びにおいて積極的に用いる場面(問題を発見し、課 題を設定する場面、自分の考えを形成する場面、異なる考えを整理したり、比較したり、深めたりする 場面等での利活用)」等が考えられる。それぞれの場面を意識しつつ、組み合わせたり往還したりしな がら情報活用能力の一部として生成 AI の仕組みへの理解や生成 AI を学びに生かす力を高め、「日 常使いする(生成 AI を検索エンジンと同様に普段使いする)」ことも視野に入れていくことが考えられ る。 なお、小学校段階の児童が直接利活用することについては、発達の段階等を踏まえたより慎重な見 極めが必要である。例えば、情報モラル教育やプログラミング教育の一環として教師による生成 AI との 対話内容を数多く提示することなどを通じて基本的な事項を学んだり、生成AI に関する体験を積み重 ねることで生成 AI についての冷静な態度を養ったりしていくことが重要と考えられる。 このような考え方を踏まえて、学習場面において利活用が考えられる例、不適切と考えられる例として は以下のような内容が考えられる。これらはあくまでも一例であって、その適否については各学校現場の 実態に即して適切に判断されるべきである。 18 18 Box-5. 学習場面において利活用が考えられる例、不適切と考えられる例 (利活用が考えられる例) • 情報モラル教育の一環として、生成AI が生成する誤りを含む出力を教材に、その性質や限界に気付く • 生成AI をめぐる社会的論議について児童生徒が主体的に考え、議論する過程で、その素材として活用する • グループの考えをまとめる、アイディアを出す活動の途中段階で、一定の議論やまとめをした上で、足りない視点を見つ け議論を深める目的で活用する • 英会話の相手として活用したり、より自然な英語表現への改善や一人一人の興味関心に応じた単語リストや例文リ ストの作成に活用したりする • 外国人児童生徒等の日本語学習や学習場面での補助のために活用する • 生成 AI の利活用方法を学ぶ目的で、自ら作った文章を生成AI に修正させたものを「たたき台」として、自分なりに 何度も推敲し、より良い文章として修正した過程・結果をワープロソフトの校閲機能を使って提出する • プログラミングの授業において、児童生徒のアイディアを実現するためのプログラムの制作に活用する • 生成AI を利活用した問題発見・課題解決能力を積極的に評価する観点からパフォーマンステストを行う • 教科書等の内容を児童生徒それぞれの進度に合わせて理解するために、解説やイメージを出力し、より内容に対す る深い理解を生み出す助けとする (不適切と考えられる例) • 生 成 A I自体の 性質やメリット・デメリットに関する学習を十分に行 っていないなど、情報モラルを含む情報活 用能 力が 十 分育成されていない段階で、自 由に使用する • 各 種コンクールの作品やレポート・小 論 文 等について、生 成 A I に よる生 成物をほぼそのまま自己 の成果物として応 募・提出する(コンクールへの応募を推奨する場合は応募要項等を踏まえた十分な指導が必要) • 詩や 俳句の創作、音 楽・美術等の表現・鑑賞など、感性や独創性を発揮させたい場 面、 初発の感想を求める場 面 等で 安易に使わせる • テ ーマに基づき調べる場面な どで、教科書等の質の担保された教材を用 いる前に安易に利用する • 教 師が正確な知識に基づきコメント・評価すべき場面 で、教師の代わりに生成A I の出力のみに頼る • 定期 考査や小テ スト等で使わせる(学習の進捗や成果を把握・評価するという目的に合致しない。CB T で行う場 合も、フィルタリング等により、生成AI が使用し得る状態とならないよう十分注意すべき) • 児 童生 徒の学習評価を、教師が判断せずに生成A I か らの出力 をもって行う • 教師が専門性を発揮し、人間的な触れ合いの中で行うべき教育指導を実施せずに、生成AI のみに相談させる 19 19 (3)利活用の際のポイント 教育活動の目的を達成する観点からの効果的な利活用を実現するため、基本的な考え方に留意 した上で、以下の点についても考慮する必要がある。 ① 安全性を考慮した適正利用 教育委員会の方針に基づき、児童生徒に利活用させるべきである。1人1台端末を用いて児童生 徒が生成 AI を利活用する場合、年齢制限をはじめとする利用するサービスの約款などの提供条件か ら、利活用に当たってのリスクが許容できることを校長及び担当教師が確認し、その約款・条件を遵守さ せること、約款・条件に則り必要に応じて事前に保護者の理解を十分に得た上で、教師の適切な指導 監督の下で児童生徒に利活用させることが必要である。 なお、ブラウザや学習支援ソフトウェア、普段利用する検索エンジン等に組み込まれた生成 AI サービ ス等についても以上の考え方は同様であり、教師の意図しない形で生成 AI サービスを児童生徒が利 活用しないように指導する必要がある。 ② 情報セキュリティの確保 教育委員会が示す教育情報セキュリティポリシーや実施手順、及びそれに基づく教育情報セキュリテ ィ管理者の指示等を遵守する必要がある。 入力した情報を学習させないという設定(オプトアウト)が可能な生成 AI サービスについては、機械 学習を許容しない設定を講じた上で生成 AI を利活用することや、プロンプトからは学習を行わない生 成 AI サービスを選択することを推奨することなどが考えられる。 ③ 個人情報やプライバシー、著作権の保護 学校現場において児童生徒が生成 AI を利活用する場合、プロンプトに氏名や写真等の個人情報 を入力させないよう留意する。 著作権については、著作権法第35条の適用を考える場合、教師・児童生徒が授業において使用・ 作成したものが、既存の著作物と同一又は類似のものであった場合でも、授業の過程における利用で あれば、同条により著作権者の許諾なく利用することが可能である。ただし、それを学校の HP にアップロ ードする、外部のコンテストに作品として提出するなど、授業目的の範囲を超えて利用する場合は、同 条が適用されず、他の権利制限規定の適用がない場合は著作権侵害となる可能性がある。生成 AI を利活用する場合もこれらの考え方は同様となり、同条の適用について確認する必要がある。 ④ 公平性の確保 教材として生成 AI を利活用する際は、その出力に偏りがないかなど、教育目的に照らして適切か否 かという観点から教師が随時判断することが必要である。 このため、教師は児童生徒にバイアスの存在を理解させた上で、生成 AI がそのようなバイアスを含む 出力を行う可能性があることを認識させ、生成 AI の出力を常に慎重に判断し、正確性・事実関係の 確認を行うよう指導することが重要である。 20 20 ⑤ 透明性の確保、関係者への説明責任 教師は、自身が十分にハルシネーションやバイアス等の生成 AI の特徴を理解した上で、児童生徒が そのような生成 AI の特徴に留意して利活用できているかを確認する必要がある。 また、学習課題の一部として生成 AI の出力を引用する場合には、生成 AI を用いたことを明記する など、出典・引用として記載する等の対応が必要と考えられる。例えば、利用した生成 AI サービスの名 称、入力したプロンプト、生成 AI を用いた日付を明示するなど、文献やインターネットから引用する場合 と同様の引用ルールを設定することが考えられる。 保護者に対しても、生成AI の利活用目的やその態様等の情報を提供することが重要である。また、 児童生徒が学校外で生成 AI を利活用する可能性も踏まえ、生成 AI を不適切に利活用されないよ うに周知し、理解を得ることが必要である。 Box-6. 課題に関する留意事項について 従前から行われてきたような形で、読書感想文や日記、レポート等を課題として課す場合、 外部のコンクールへの応募 等を推奨したり、課題として課したりする場合には、次のような留意事項が考えられる。 • レポート等の課題を出す際には、例えば、自分自身の経験を踏まえた記述になっているか、レポートの前提となる学習 活動を踏まえた記述となっているか、事実関係に誤りがないかなど、評価する際の視点を予め設定することも考えられ る。 • 仮に提出された課題をその後の学習評価に反映させる場合は、例えば、クラス全体又はグループ単位等での口頭発 表の機会を設ける、まとめた内容が十分理解され、自分のものになっているかを確認する活動を設定するなどの工夫 も考えられる。 • 生成AI の利活用を想定していないコンクールの作品やレポート等について、生成AI の出力をそのまま自己の成果物 として応募・提出することは評価基準や応募規約によっては不適切又は不正な行為に当たること、活動を通じた学び が得られず、自分のためにならないことなどについて十分に指導する(保護者に対しても、生成 AI の不適切な利活 用が行われないよう周知し理解を得ることが必要)。 • 課題研究等の過程で、自らが作成したレポートの素案に足りない観点等を補充するために生成AI を利活用させる ことも考えられる。その際、情報の真偽を確かめること(いわゆるファクトチェック)を求めるとともに、最終的な成果物 については、生成AI とのやりとりの過程を参考資料として添付させることや、引用・参考文献等を明示させることも考 えられる。 • 自らの作った文章を基に生成 AI に修正させたものを「たたき台」として、何度も自分で推敲し、より良い自分らしい文 章として整えた過程・結果をワープロソフトの校閲機能を使って提出させることも考えられる。 • 生成AI を用いた際には、生成AI ツールの名称、入力したプロンプトや出力、日付等を明記させることが考えられる。 21 21 3-3.教育委員会等が押さえておくべきポイント (1)基本的な考え方 生成 AI を学校現場で利活用する際には、教育委員会が主導して制度設計や利活用の方向性を 示すことが重要である。生成AI の実践を積み重ねているかどうかは学校や教職員によって大きな差があ るため、域内の各学校の実態を十分に踏まえた柔軟な対応を講じることが必要であり、一律に禁止した り、義務付けたりするような硬直的な運用は望ましくない。 教育委員会には、教員養成系大学やサービス提供者等の外部のリソースも活用しつつ、先行事例 や教材・ノウハウを周知・共有することが期待される。また、教職員の生成 AI に関する理解を深め、生 成 AI を意図的に利活用する場面、生成 AI の出力を吟味する時間の確保、深い学びにつながる発 問など、効果的な活用を促進する研修を実施することにより、生成 AI の適切な利活用を推進する環 境を整備する必要がある。 (2)適切な利活用のために考慮すべきポイント 教育委員会は、学校現場で生成 AI の適切な利活用が行われるよう、基本的な考え方に留意した 上で、以下の点についても考慮する必要がある。 ① 安全性を考慮した適正利用 域内の各学校が適切に生成 AI の利活用を行えるように本ガイドラインをよく理解し、域内の各学校 の実態を十分に踏まえた柔軟な対応を講じることが必要である。 また、ブラウザや学習支援ソフトウェア、普段利用する検索エンジン等に組み込まれた生成 AI サービ スなど、多様なサービス形態が存在することに留意の上、フィルタリングの設定 やログの収集等学校の実 態に即した適切な対策を講じることが求められる。 約款に基づく外部サービスとして生成 AI を利用する場合はその約款の内容を、個別契約を行う場 合にはその契約内容が適切かどうかを十分に確認する必要がある。 ② 教育情報セキュリティの確保 最新の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」も踏まえつつ、 学校現場の実態に即した 教育情報セキュリティポリシーを教育委員会が策定し、必要に応じて見直すことが重要である。 校務の効率化を推進する観点では、データベースの整備を含む、個人情報や重要性の高い情報を 適切に取り扱うことのできる利用環境を構築・運用することも考えられる。個人情報等の重要性の高い 情報の取扱いについては、最新の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」等も参照し、各 教育委員会のネットワーク環境に即した、既存の校務系システムと同程度のセキュリティ対策を講じるな ど、適切なセキュリティ対策及び情報の取扱いを確保する必要がある。 ③ 個人情報やプライバシー、著作権の保護 22 22 学校現場への生成AI サービスの導入に当たっては、最新の「教育データの利活用に係る留意事項」 等も参照しながら、個人情報保護法等の関係法令等を遵守し、個人情報の取扱いに関して必要かつ 適切な措置が取られているかの確認を行う必要がある。また、学校における著作権侵害のリスクを低減 するために、著作権侵害に対する適切な予防措置を講じているモデルやサービスを選択すること 25も考 えられる。26 ④ 公平性の確保 教育委員会が個別に利用環境を構築した場合であっても、生成AI の特徴であるハルシネーションや バイアス等のリスクや懸念は解消されない。そのため、教職員による最終的な判断は不可欠であることな ど、学校に対して適切な情報提供や研修等のサポートを行うことができるよう、体制の整備や知見の収 集に努めることが重要である。 ⑤ 透明性の確保、関係者への説明責任 学校現場に生成 AI サービスを導入する際は、その目的やサービス内容、規約等について、適切な 利活用を実現するための研修を実施するなど、丁寧な情報提供を行う必要がある。 生成AI サービスの提供条件はサービス提供者に委ねられており、将来にわたって無償や安価な価格 で利用可能とは限らない。外部サービスの利用に起因するリスクを踏まえ、保護者の経済的な負担等 に十分に配慮しつつ、サービス提供者の事業変更リスク等を十分に勘案して、利用するサービスを選択 することが重要である。 25 生成AI サービスの利用者の立場では、使用されている学習済みモデルに関する情報や利用規約といった、利活用 しようとする生成AI についての適切な情報確認を行うこと、生成AI の利活用に関する内部的ルールの策定、著作権 侵害発生時の対応を想定した検討を行っておくこと等が望まれる。(「AI と著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」 (令和6 年7 月31 日、文化庁著作権課)) 26 なお、著作権法第 35 条は学校その他教育機関における複製等に関する規定であるため、教育委員会において 生成 AI を利用する場合には同条の適用は考えにくいことに注意する必要がある(その場合、著作権者に許諾をとる か、又はその他の権利制限規定の適用を考える必要がある)。 23 23 参考資料編 本ガイドラインの参考資料として、各場面や主体に応じて生成 AI を学校現場で利活用する際に押 さえておくべきポイントを整理したチェック項目や生成 AI パイロット校における先行取組事例、学校現場 において活用可能な研修教材等の情報をまとめている。学校教育関係者が生成 AI を利活用するに 当たっては、このようなチェック項目や先行取組事例、研修教材等の情報も参考にしていただきたい。 【参考資料編】 • 教職員が校務で利活用する際のチェック項目 p.24 • 児童生徒が学習場面で利活用する際のチェック項目 p.25 • 生成 AI パイロット校における先行取組事例(一部抜粋) p.26~27 • 学校現場において留意すべき代表的なリスクや懸念の例 p.28 • 学校現場で活用可能な研修教材等 p.29~30 • その他の参考資料 p.31~33 24 24 教職員が校務で利活用する際のチェック項目  教育委員会の方針(情報セキュリティに関するルール・指示等も含む)に基づき利 用しているか(p.15)  業務端末又は教育情報セキュリティ管理者の許可を得た端末を利用しているか (p.15)  生成AI サービスの提供者が定める最新の利用規約を確認・遵守しているか (p.10、15)  ハルシネーションやバイアス等の生成AI の特徴を理解した上で、出力結果の適切性 を判断できる範囲内で利活用し、出力された内容を採用するかどうかを自身で判断 しているか(p.10、11、13、16)  プロンプトに重要性の高い情報である成績情報等を入力していないか(p.15) ※重要性の高い情報を扱う前提のセキュリティ対策が講じられている場合は除く(ただし、重要性の高い情報の うち個人情報に該当する情報については、以下「プロンプトに個人情報を入力していないか」についても留意する 必要がある。)  プロンプトに個人情報を入力していないか(p.15、16) ※教職員がプロンプトに入力した個人情報を、生成 AI サービスの提供者において応答結果の出力以外の目的で取 り扱わないことを確認している場合は除く  著作権の侵害につながるような使い方をしていないか (p.11、12、15、16) 25 25 児童生徒が学習場面で利活用する際のチェック項目  教育活動の目的を達成する観点で効果的であることを確認しているか(p.7 、17)  児童生徒の発達の段階や情報活用能力の育成状況に十分留意しているか(p.7、 17)  生成 AI の性質やメリット・デメリット、情報の真偽を確かめる、自己の判断や考えが 重要であることを十分に認識でき るような使い方等に関する学習を実施しているか (p.7、8、17)  プロンプトに氏名や写真等の個人情報を入力しないよう十分な指導を行っているか (p.19)  著作権の侵害につながるような使い方をしないよう十分に指導しているか (p.11、 12、19)  生成AI サービスの提供者が定める最新の利用規約を確認・遵守しているか(年 齢制限や保護者の同意の必要性、生成物のライセンスの所在など)(p.10、 11、19)  生成 AI による生成物をそのまま自己の成果物として使用することは自分のためにな らないこと、使用方法によっては不適切又は不正な行為になることを十分に指導して いるか。(p.19、20)  学習課題に生成 AI の回答を引用している場合、出典・引用を記載することを理解 させているか(p.20)  保護者の経済的負担に十分に配慮して生成AI ツールを選択しているか(p.23)  児童生徒が学校外で生成AI を利活用する可能性も踏まえ、生成AI の不適切な 利活用が行われないよう、保護者に対し周知し、理解を得ているか(p.20) 26 26 生成 AI パイロット校における先行取組事例 生成 AI パイロット校における先行取組事例の中から、ガイドライン p.14 の「教職員による校務での 利活用例」や、p.18 の「学習場面において利活用が考えられる例」に即した実践事例を抜粋し、掲載 している。生成 AI パイロット校で実施している先行取組事例については、リーディング DX スクール事業 の HP27等より確認いただきたい。 なお、同 HP 内の「指定校実践事例・動画」のページ 28では、生成 AI の活用方法に関する教育実 践について、学習場面での利活用や校務での利活用と種別、学年や教科によって絞り込み検索するこ とも可能となっている。 【校務での利活用に関する先行取組事例】 27 https://leadingdxschool.mext.go.jp/ai_school/ 28 https://leadingdxschool.mext.go.jp/achieve/ai/ 授業で取り扱う教材や確認テスト問題のたたき台を作成する、各種お便り(学年・学級だより、給食だより、保健だより 等)・通知文・案内文のたたき台を作成する(大阪市立天王寺中学校) 英語の小テスト問題のたたき台を生成AI を用いて作成した。中学生が身近に感じられる場面設定をした文章を瞬時に作 成でき、とても便利になった。また、これまで教師が作っていた学校行事の保護者案内文やスイスの姉妹校に送るメッセージ カードのたたき台を生成AI を用いて作成した。プリントの英文作成等にかかっていた時間が大幅に短縮された。 授業での発問に対する回答のシミュレーション相手として活用する(相模原市立中野中学校) 「生徒が自分の考えを広げたり深めたりしている姿」を各教科担当が単元をイメージしながら、事前に作成した対話型の模 擬授業プロンプトに課題を記入し、生徒同士がどのような対話を行うか生成AI に尋ねた。課題の出し方によって対話が弾 んだり目標に迫ったりする一方、課題が明確ではない場合は対話が弾まず、一問一答のような対話になっていた。後者のよ うな課題の場合、実際の授業でも生徒が課題解決に向かって思考力が高まるような対話はできないことが予想される。教 師の課題づくりの支援となると感じた。 授業で使用したワークシートや振り返りの内容を基にテスト問題のたたき台を作成する(岩沼市立岩沼北中学校) 生徒が学習して疑問に感じたことや授業で理解できた内容などを考慮したテスト問題となるように、授業で使用したワークシ ートや生徒の振り返りの文言などをまとめてPDF 化し、生成AI に読み込ませてテスト問題を作成した。また、知識・技能を 問う問題、思考・判断・表現を問う問題など、評価の観点ごとに分けて提案させ、テスト問題作成のたたき台にした。 各種お便り(学年・学級だより、給食だより、保健だより等)・通知文・案内文のたたき台を作成する(武雄市立川登 中学校) あいさつ文、保護者あて文書、教育講演会の謝辞作成、学年だより等の添削に利用した。生成AI が作成した内容はあく までも例とし、最終的には作成者による内容確認、修正、補足、追記等の必要性を確認した。各種通信(学年だより、 学級だより)は作成者が誤字・脱字のチェックを生成AI で行うことにより、教務主任、教頭、校長のチェックの時間短縮に 繋がった。 学校行事に関するHP 掲載文や報告記事のたたき台を作成する(京都市立美術工芸高等学校) 生成AI を使用し、過去の学校HP の掲載記事を参照させながら文章を生成した。(①プロンプトの入力、②方向性の 修正、③修正指示の上文章を生成、④実際に文書を掲載)最終的な手直しは必要になったが、より手軽に文章を用意 することができ、業務負担の軽減に繋がった。 27 27 【学習場面での利活用に関する先行取組事例】 情報モラル教育の一環として、生成AI が生成する誤りを含む回答を教材として使用し、その性質や限界等を気付く 大阪市立高殿小学校 【小学校段階】 AI の正しい知識を身に付ける(6年次・国語科) AI についての基本知識を確認した後に、生成AI を利用して教員が作成した記事と 実際の記事を比較し、今後どのようにAI を活用したいか、考えをまとめた。 児童の反応としては、「インターネット上の情報をすぐに信じるのではなく、様々な資料と 照らし合わせたり、自分の経験を基に考えることが大切だと感じました。」といったものが 見られた。 英会話の相手として活用したり、より自然な英語表現への改善や一人一人の興味関心に応じた単語リストや例文リス トの作成に活用したりする 宮城県岩沼市立岩沼北中学校 【中学校段階】憧れの人物を英語で紹介する(3年次・英語科) 憧れの人物を英語で紹介する授業において、自分で作成した英作文が意味の通る 文であるかどうかChatGPT に直接入力したり、音声入力をしたりして確かめさせ、訂 正が必要な文はどう直せばいいのか提案してもらった。音声入力をすることにより、自分 の発音が正しいかどうかをある程度確認できる上、より自然な英語表現を提案してもら うこともできた。 グループの考えをまとめる、アイディアを出す活動の途中段階で、一定の議論やまとめをした上で、足りない視点を見つ け議論を深める目的で活用させる 茨城県つくば市立 学園の森義務教育学校 【中学校段階】話し合いで問題を検討する(2年次・国語科) グループごとに設定した問題について話し合う活動において、新たな視点や自分たちの 意見に対するアドバイスを生成AI からもらい、検討を深めた。 生徒の様子としては、「生成AI からのアドバイスも、グループで話し合った内容に加え た上で再検討して、最終的な結論を出していた。」といったものが見られた。 プログラミングの授業において、児童生徒のアイディアを実現するためのプログラムの制作に活用する 茨城県立竜ヶ崎第一高等学校 【高等学校段階】デスクトップアプリの作成(1年次・情報科) Python を用いたアプリの作成時に生成AI を活用してコードを作成した。プロンプトを 工夫しながら、目的に見合うコードを組み込みアプリを完成させた。 28 28 学校現場において留意すべき代表的なリスクや懸念の例 ここでは国内外での様々な議論 29を参考にしつつ、学校現場において留意すべき代表的なリスクや 懸念を例示する。なお、ここで取り上げるリスクや懸念は代表的なものであって、生成 AI が有するリスク を網羅したものではない。 また、このようなリスクや懸念の存在が直ちに生成 AI の利用を妨げるものではなく、スマートフォン等が 広く普及し、既に一定数の児童生徒が学校外で生成 AI に触れているとの指摘もある中においては、リ スクを正しく認識した上で、学校現場において正しく向き合っていくことが重要である。 学校現場において留意すべき代表的なリスクや懸念の例 (AI に人格があるかのように誤認するリスク) 生成AI は流暢な文章やコンテンツを生成することが可能であり、また人間のコミュニケーションと遜色ないスピードで反応 するレベルに到達している。児童生徒が、人間のように振る舞うAI に触れることで、AI に人格があるかのように誤認するリ スクがある。 (資質・能力の育成に悪影響を与えるリスク) 学習活動の目的や育成したい資質・能力を十分に意識しないままに、安易に生成 AI を児童生徒の学習活動に導 入することで、AI に依存したり、AI の答えを鵜吞みにしたりするなど、目的に即した必要な学習過程が省略されてしまい、 資質・能力の育成に繋がらないリスクがある。 (バイアスの存在とそれによる公平性の欠如) 生成 AI は既存の情報に基づいて回答を作るため、その答えを鵜呑みにする状況が続くと、既存の情報に含まれる偏 見を増幅し、不公平及び差別的な出力が継続・拡大する可能性がある。生成AI サービスを利用する人間側にも、流暢 な出力を見ると正しいと感じてしまう流暢性バイアスや、人間の判断や意思決定において自動化されたシステムや技術に 過度に依存してしまう自動化バイアス等の様々なバイアスが存在している。 (機密情報や個人情報に関するリスク) 生成 AI サービスでは、入力された機密情報や個人情報が、生成 AI の機械学習に利用されることがあり、他の情報 と統計的に結びついた上で、また、正確又は不正確な内容で、生成 AI サービスから出力されるリスクがある。 (著作権に関するリスク) 生成 AI においては、既存の著作物と類似した生成物が生成される可能性があり、そのような生成物の利用の態様に よっては著作権侵害が生じるリスクがある。 (外部サービスの利用に起因するリスク) 生成AI サービスはその利用形態も多様であり、利用に当たってはサービス提供者の定める利用規約に基づくことが求め られる。その際、現在は無償のサービスであったとしても将来的に有料のサービスになる価格の変動リスク、サービス停止等 の提供条件の変動リスク、日本の法令が適用されないリスクや係争時における管轄裁判権が日本国外になるリスクがある ほか、技術やサービスの進展が早いことから利用規約が頻繁に変更されるリスクも考えられる。 29 生成AI が有するリスクについては、「AI 事業者ガイドライン(別添)」のp.12 以降もご確認いただきたい。 29 29 学校現場で活用可能な研修教材等 文部科学省等が実施してきた研修(アーカイブ公開含む)や利用可能なコンテンツ等の例を掲載 している。 生成 AI に関する教員向け研修動画シリーズ(文部科学省、 令和5 年9月) 生成AI に関する教員向け研修動画シリーズを公開 ① 情報活用能力の育成と情報モラル教育を踏まえた生成AI ガ イドラインの理解(東京学芸大学大学院 教育学研究科 教 授 堀田龍也氏) ② 生成AI を活用する上での基本的な考え方(信州大学 学術 研究院 教育学系 准教授 佐藤和紀氏) ③ 生成AI の性質や限界(東京大学大学院 工学系研究科 准教授 吉田塁氏) 生成 AI の利用に関するオンライン研修会(文部科学省、 令和5 年9月) 生成AI に関するオンライン研修会を開催し、アーカイブ動画・資 料を公開。 ① 生成AI の基礎と教育における活用可能性(東京大学大学 院 工学系研究科 准教授 吉田塁氏) ② 教育活動・教務で活用できるプロンプト紹介(スクールエージェ ント株式会社 代表取締役 田中善将氏) ③ 生成AI を活用する上での基本的な考え方 情報活用能力の 育成(信州大学教育学部 准教授 佐藤和紀氏) ④ 技術の進化は教育に何をもたらすのか(デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐 佐藤昌宏氏) ⑤ 教育における生成AI の可能性(京都橘大学発達教育学 部 教授 池田修氏) 情報モラル学習・教育サイト(文部科学省) 児童生徒、教員、保護者を対象とした情報モラルに関するコンテンツ をまとめたサイトで、動画コンテンツ・啓発資料、授業実践・事例コン テンツなどを掲載。また、動画コンテンツをもとにしたクイズ形式の問題 を掲載した「情報モラル学習サイト」も公開。 Plant 全国教職員研修プラットフォーム(独立行政法人教職員支援機構) 教員研修の受講や履歴の記録ができるプラットフォーム。「生成系A Iの授業活用研修コンテンツ」(大分大学)など、様々な研修情 報を公開している(ログインには、教育委員会から発行されるアカウ ントや、誰でも発行可能なゲストユーザーアカウントの発行が必 要)。 30 30 学校における教育活動と著作権(文化庁著作権課、 2023 年4 月改訂版) 本ガイドラインにおいて紹介している学校の授業における複製又はイ ンターネット送信(著作権法第35 条)に関することをはじめ、試験 問題としての複製(同法第36 条)・レポート作成などでの「引用」 (同法第32 条)、文化祭・部活動などでの上演等(同法第38 条第1項)といった、学校現場で直面する著作物の利用について 解説。 平成30 年著作権改正「授業目的公衆送信補償金制度」の運用 指針についても掲載。 楽しく学ぼうみんなの著作権 小学生のための著作権教材(文化庁著作権課) 小学生を対象とした著作権動画教材。 インターネット上の著作物の扱い方など、著作権法の基礎知識を学 べる内容。 生成 AI はじめの一歩~生成AI の入門的な使い方と注意点~(総務省) 今後の生活の中で生成AI に触れうる国民の方(初心者)向け に、 ① 生成AI の基礎知識、② 生成AI の活用場面や入門的な 使い方、③ 生成AI 活用時の注意点 を紹介する教材を掲載。 31 31 その他の参考資料 初等中等教育段階における生成 AI の利活用に関する検討会議について 【会議構成員】 (有識者構成員) 相澤 彰子 国立情報学研究所コンテンツ科学研究系 教授/副所長 石川 正俊 東京理科大学 学長 (座長) 今井 むつみ 慶應義塾大学 環境情報学部 教授 江間 有沙 東京大学 国際高等研究所東京カレッジ 准教授 佐藤 和紀 信州大学 学術研究院教育学系 准教授 鈴木 秀樹 東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 利根川 祐太 特定非営利活動法人みんなのコード 代表理事、横浜美術大学 客員教授 藤村 裕一 鳴門教育大学大学院学校教育研究科特命教授、教員養成DX 推進機構長 細田 真由美 兵庫教育大学客員教授、前さいたま市教育長 森田 充 つくば市教育委員会 教育長 吉田 塁 東京大学 大学院工学系研究科 附属国際工学教育推進機構 准教授 東京財団政策研究所 主席研究員 (オブザーバー) 内閣府科学技術イノベーション事務局、経済産業省、総務省 【会議開催実績】 日時 詳細 第 1 回 令和6 年7 月25 日 10:00~12:00 初等中等教育段階における生成AI の利活用に関する論点について 第 2 回 令和6 年8 月8 日 10:00~12:00 有識者・事業者からの御発表(株式会社GenesisAI 今井翔太氏、アドビ株 式会社、Google 合同会社、日本マイクロソフト株式会社) 委員からの発表及び意見交換(利根川委員) 第 3 回 令和6 年9 月3 日 09:00~11:00 委員からの発表及び意見交換(今井委員、鈴木委員、佐藤委員、吉田委 員) 第 4 回 令和6 年9 月24 日 10:00~12:00 有識者からの御発表(国立情報学研究所 新井紀子教授) 委員からの発表及び意見交換(森田委員) これまでの主な意見を踏まえた意見交換 第 5 回 令和6 年10 月18 日 10:00~12:00 ガイドラインの改訂に向けた検討のポイントについて 第 6 回 令和6 年11 月26 日 10:00~12:00 初等中等教育段階における生成AI の利用に関するガイドラインの改訂について 第 7 回 令和6 年12 月20 日 10:00~11:30 初等中等教育段階における生成AI の利用に関するガイドラインの改訂について 32 32 国内外の関連資料 (国内) • 文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和 6 年 1 月) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1397369.htm • 文部科学省「教育データの利活用に係る留意事項(第2 版)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/other/data_00007.htm • 内閣府 「人間中心の AI 社会原則」、「AI に関する暫定的な論点整理」、「AI に関する制度の 考え方」 https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/index.html • 内閣府 知的財産戦略推進事務局 「AI 時代の知的財産検討会 中間とりまとめ」 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ai_kentoukai/kaisai/index.html • 総務省「広島 AI プロセス」 https://www.soumu.go.jp/hiroshimaaiprocess/ • 総務省・経済産業省「AI 事業者ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/202404 19_report.html • 文化庁「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策についての相談窓口」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/kaizoku/index.html • 文化庁「文化芸術活動に関する法律相談窓口」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index .html • 文化庁「AI と著作権に関する考え方について」、「AI と著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html • 個人情報保護委員会「生成 AI サービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日) https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/ • JST、CRDS「人工知能研究の新潮流 2 ~基盤モデル・生成 AI のインパクト~」 https://www.jst.go.jp/crds/report/CRDS-FY2023-RR-02.html • AISI Japan「AI セーフティに関する評価観点ガイド」 https://aisi.go.jp/effort/effort_information/240918_2/ 33 33 (国外) • Artificial Intelligence and the Future of Teaching and Learning(米国、 Department of Education、2023 年 5 月) https://tech.ed.gov/ai-future-of-teaching-and-learning/ • Guidance for generative AI in education and research(UNESCO、2023 年 9 月) https://www.unesco.org/en/articles/guidance-generative-ai-education-and- research • Generative artificial intelligence (AI) in education(英国、Department for Education、2023 年 10 月) https://www.gov.uk/government/publications/generative-artificial- intelligence-in-education • Australian Framework for Generative Artificial Intelligence (AI) in Schools(豪 州、Department of Education、2023 年 11 月) https://www.education.gov.au/schooling/resources/australian-framework- generative-artificial-intelligence-ai-schools • Digital Education outlook2023(OECD、2023 年 12 月) • Opportunities, guidelines and guardrails for effective and equitable use of AI in education(OECD、2023 年 12 月) https://www.oecd.org/en/about/projects/smart-data-and-digital-technology- in-education--artifical-intelligence,-learning-analytics-and-beyond.html • Designing for Education with Artificial Intelligence: An Essential Guide for Developers(米国、Department of Education、2024 年 7 月) https://tech.ed.gov/designing-for-education-with-artificial-intelligence/ • The potential impact of Artificial Intelligence on equity and inclusion in education(OECD、2024 年 8 月) https://www.oecd.org/en/publications/the-potential-impact-of-artificial- intelligence-on-equity-and-inclusion-in-education_15df715b-en.html • Empowering Education Leaders: A Toolkit for Safe, Ethical, and Equitable AI Integration(米国、Department of Education、2024 年 10 月) https://tech.ed.gov/education-leaders-ai-toolkit/